昨年、急に弁護士業に興味を持ち、自分の興味の強さを計りたいと思い、中学生向けの弁護士業についての本を読んだり、Youtubeをたくさん見たりした。しかし、いまいち自分の人生と絡めることがうまくできずにいた今日この頃。
自分の人生に登場したことない職業だったため、書籍や動画でいくら調べようと、やはり自分以外の人生な気がしてしまって、熱量の火種が消えかかっていたときに「裁判傍聴」というものがあることを知った。
何も知らないまま、とりあえず「裁判傍聴 東京」と検索した。結果、最高裁判所、地方裁判所、家庭裁判所の3つの裁判所が出てきた。そもそも3つの裁判所の違いもわからず、また裁判傍聴は無料なのかもわからず、私のような何も知らない人間が思い立った勢いで行って良い場所なのかもわからない。そんな「わからない」に飲み込まれながらも、とりあえず霞ヶ関へ足を運んでみた。
時は四月。
傍聴する予定の裁判はどうやら抽選スタイルだったようで、指定された時間に行ってみると、抽選券を渡された。指定時間になるとホワイトボードに番号が掲示されて、配られた抽選券に記載してある番号と見比べるも、残念ながら自分の番号はホワイトボードに存在しない。やはり私の人生には関係ない職業なのだなと、たった一回の抽選に落ちた経験を、独自のジンクスに当てはめて帰宅した。
もう熱量なんてものはなく、もちろんその間に自分の人生に弁護士が登場するようなイベントが起きることもなく、ただ一度興味を持ったことがあるという惰性的な興味がうっすらと残り続ける10月。
ただ暇だから、という理由だけで、もう一度霞ヶ関に行ってみた。
今回の裁判は抽選はなし。
そもそも抽選があるタイプとないタイプでなんの違いがあるのかもよくわかっていないぐらいの知識量なのだから、全員参加可能な裁判傍聴で良いと思ったのだ(なぜ1回目に抽選スタイルの裁判を試みたのか…)。
とはいえ指定された時間に行くと、私以外にもたくさん人がいて、抽選では無いものの人数制限はあるようで、傍聴参加者チケットのようなものを配られた。入場可能時間までは一旦外で待機。
そして、裁判所入場可能時間になると、先ほど配られたチケットを一度回収されて、今度は裁判傍聴チケットみたいな、別のチケットを配布された。
そのチケットの裏には、裁判傍聴のルールのようなものが書いてあり、例えばハチマキをしての参加や声援などはNGといった、傍聴人参加スタイルを制限するようなものから、傍聴中は読書をしてはいけませんといった、過去にそんなことをした人がいるのか思ってしまうような、これまで知らなかった傍聴ルールの記載があった。
裁判所に入場するときには、空港の保安検査の時と同様に、荷物を全て預けて、そしてゲートを潜って持っているものに危険なものがないか確認する作業が行われた。
(PCとスマホと財布と本ぐらいしか持っていないのに、この検査の時はいつだってドキドキしてしまう。)
とはいえなんの問題もなくゲートを通過することができて、とりあえず裁判所のメインフロアをゆったりと歩いてみた。
入り口すぐのところに、小さめのタッチパネル式の何かがあって、みてみるとどんな裁判がいつどこで行われるのか、また誰が担当の裁判なのかなどの情報が電子で検索できるものだった。
そもそも私は目的の裁判があって来ているわけなので、そのタイミングでそのパネルを使うことはなかったけれど、事前に傍聴可能な裁判情報をネットで調べた時よりもたくさんの裁判情報が反映されていた。一般傍聴可能な裁判と不可能な裁判は、どこで誰の手によって決められるのだろうか。
また裁判所マップのようなものが壁に掲示されていて、食堂があることを確認していたら、裁判の開始時間が近くなってきて、私は初の裁判傍聴室へ足を運んだ。
今回の裁判のテーマは、生活保護基準引き下げ違憲訴訟のようなものだったと思う。
なんの下調べもないまま傍聴に来てしまった私だったが、思ったよりも満席に近く、しかも私の周りの人たちは知り合いで来ている人達が多いような状況であり、一人だけ無関係の人間が村社会に投げ込まれたような気持ちになってしまった。
知り合い同士で来ている人たちは、何やらこの裁判の資料のようなものを紙媒体に印刷して持ってきている。覗き見すれば微妙に読めてしまいそうな文字サイズで、少しは自分も勉強するべきだったかと周りの熱量に圧倒され、少し資料を目で追った矢先、裁判が始まった。
自身が座っている席から見て向かって右側に一般人のような人達が。
向かって左側にスーツを着て難しい顔をしているおそらく弁護士軍団が。
多分一般人ぽい人が訴えた側で、スーツ軍団が訴えられた側なのだろうなと思っていると、センターの扉から裁判官たちが入場してきた。
裁判官たちの入場に合わせて、傍聴席の一同が起立を始めたので、慌てて私も立ち上がる。
裁判長の礼に合わせて、一同揃って礼をして着席して、今度こそ本当の意味で、裁判が開廷した。
最初に今回の裁判における争点の説明があり、その後訴えた側の2人が意見を述べた。そしてその後、代理人といえば良いのか、専門知識がありそうな訴えた側の味方のおじさん(弁護士なのかは不明)が淡々と話を続けた。ちなみに、訴えた側2人は声も大きく、ゆっくり話してくれて何を言っているのか理解できたけれど、おじさんは専門知識や前提の話が多すぎて、そして声も小さく、何をいっているのか、ちょっとよくわからなかった。
そしてさらに、訴えた側の人が意見を言うたびに、客席に座る仲間のような人達が揃って拍手をして、都度裁判長に注意をされていた。(生の「静粛にお願いします」を聞けた。また事前勉強なしと書いたものの、こたけ正義感の逆転裁判の実況を事前に見ていた私は、逆転裁判のような発言だ、とここで少しテンションが上がった。)
訴えた側の意見陳述が終わって、訴えられた側が言い返すのかと思いきや、特にそういう時間はなく、裁判長が次の裁判の期日をアナウンスし、裁判はあっさりと終わってしまった。
次の裁判は2026年の2月らしい。遠い。遠すぎる。
テレビドラマのCMの時間すら待機できない私にとって、今回の裁判の続きが数ヶ月先なことはあまりにも気が滅入る状況であり、覚えていられるかどうかも定かではない。
しかしとはいえ、次の裁判が2月にあることだけは、初の裁判傍聴から2ヶ月が経過した今でも覚えてしまっている。
このままあと2ヶ月後まで、このことを覚えていられるだろうか…。
そんなことを思いながら閉廷した裁判室から退出し、裁判所を後にしようとすると、外には、陳述した2人のことを万雷の拍手で迎える準備をしたさっきの仲間たちがのぼりを持って裁判所の前で、待ち構えていた。
そしてそこで私は思い出した。
私が初の裁判傍聴を試み抽選落ちした時の周りの人達が、彼らと同じ人達だったことに。あの時もこののぼりがあって、たくさんの人数がいたのだ。
数ある裁判の中で、まさか同じ案件の傍聴を試みてしまうとは、これまた別のジンクスを作りかねない状況だ。
奇跡的だ、と思いつつ、私の裁判傍聴は終了した。
あー、どうなるのだろう、この裁判の結果は。
こたけ正義感のyoutubeから、「判決の時に『被告人は』から発言が始まったらそのあとは『有罪』しか待っていない」という知識だけ得たのだが、今回の裁判はそういうやつじゃなさそうだ。
あー、結果がうっすら気になる。勢いで参加しただけなのに、どうなるのか最終回が気になる。そもそも1話から見てるわけでもない裁判なのに。多分全10話のうちの9話だけしか見てないレベルなのに、見てしまったのが9話だからこそ気になってしまっている気がする。
どうか2月に、最終話を見届けられると良いな。
おわり